相続対策に、小規模企業共済制度を活用しよう!

小規模企業共済制度を利用し、所得税・住民税について税務上のメリットを得る方法はよく利用されています。
本記事では、さらに、相続税の観点から税務上のメリットをご紹介します。

 

【目次】

1.小規模企業共済制度とは?

2.相続対策としての小規模企業共済制度の活用

3.死亡により共済金を受給する場合の注意点

4.まとめ

 


 

1.小規模企業共済制度とは?

独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する制度で、個人事業主や小規模企業の役員が、第一線を引いた後の生活に備える「経営者用の退職金」です。

下記のような特徴があります。

① 掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除になり、所得税・住民税の節税になります。
② 共済金は、一括受取りだと「退職所得」、分割受取りだと「公的年金等の雑所得」となり、税制上の優遇がされています。
③ 共済金の受給権は、倒産等になっても差押えされません。

節税をしながら将来に備えられる制度として、個人事業主・中小企業の役員の皆様に広く利用されています。

★制度の詳細:独立行政法人 中小企業基盤整備機構 ホームページ(リンク)

 

2.相続対策としての小規模企業共済制度の活用

退職金の積み立てとして利用されている小規模企業共済ですが、相続対策にも利用できます。
共済金を遺族が受給する場合、相続税では退職手当金等として扱われます。この退職手当金等には、非課税の規定があり、非課税の控除後が課税対象となります。
相続税の非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」で算出されます。
退職手当金等から非課税部分が控除されますので、同額の現金を相続した場合に比べ、退職手当金等の方が税金の負担が少なくなります。
ただし、相続人以外の人が取得した退職手当金等には、非課税の規定はありませんのでご注意ください

(例)死亡により共済金2,000万円が遺族に支払われた場合(法定相続人は3人) 2,000万円-500万円×3人=500万円

  ⇒共済金2,000万円ではなく、非課税(1,500万円)を控除した後の500万円に対して相続税が課されます。

 

3.死亡により共済金を受給する場合の注意点

(1)共済金を受給できる遺族の順番が決まっている

死亡により共済金を受取る場合、受給権者(共済をもらえる人)は下記のように決まっています。

①受給権者の範囲および順位

第1順位 配偶者(事実上の婚姻関係のあった者を含む)
第2順位 子 (共済契約者の収入によって生計を維持していた者)
第3順位 父母(共済契約者の収入によって生計を維持していた者)
第4順位 孫 (共済契約者の収入によって生計を維持していた者)



ここでは省略しますが、第14順位まであります。

★受給権者の範囲および順位の詳細はこちら独立行政法人 中小企業基盤整備機構 ホームページ(リンク)

 

②同一順位者が2人以上いる場合はその人数で等分される。

例えば、共済金額が2,000万円で第2順位の「子」が2人いる場合、2,000万円÷2人=1,000万円を各自が取得します。

このように死亡した場合の共済金は、もらえる順位が決まっており、生命保険のように受取人を指定することができませんので、注意が必要です。

 

(2)契約後すぐに効果が出ない。

小規模企業共済は将来の退職金の原資を積立てることを目的とした制度ですので、一定期間続けないとそれほど大きな受取金額になりません。また、掛金納付月数が6か月未満だと、受取金額はなく、掛け捨てとなってしまいます。

計画的に加入することをおすすめします。

 

 4.まとめ

今回は小規模企業共済制度を活用した相続税対策をご紹介しました。
・納税資金の確保に即効性を求めるなら生命保険金
・長い目で資金を確保するのであれば小規模企業共済
と、状況に合わせて複数の制度を組み合わせるのがいいのではないでしょうか。
相続税法上、生命保険金と退職手当金等の両方で相続税の非課税が利用できますので、ご参考にしてください。

 

相続でお困りの方、相続に関してご相談されたい方は、税理士法人かけはしまでお気軽にお問い合わせください。
・お電話でのお問い合わせ 0422-38-9004(平日 10:00~17:00)
・メールでのお問い合わせ 弊社ホームページお問い合わせフォーム よりお問い合わせください。

 

●関係法令
所得税法第75条(小規模企業共済等掛金控除)
所得税法第30条(退職所得)
所得税法第31条3号(退職手当等とみなす一時金)
所得税法施行令第72条3項(退職手当等とみなす一時金)
所得税法第35条(雑所得)
相続税法第3条(相続又は遺贈により取得したものとみなす場合)
相続税法第12条(相続税の非課税財産)
相続税法第15条(遺産に係る基礎控除)
小規模企業共済法第9条(共済金)
小規模企業共済法第10条(遺族の範囲及び順位)
小規模企業共済法第15条(譲渡し等の禁止)